災害やテロ対策を理由として,国家緊急権,つまり,緊急事態条項を憲法に入れるために憲法を改正しようという動きが出ています.9条や96条の改正に比べると改正しやすい,国民の理解も得やすいのではないか,ということのようです.
緊急事態条項(国家緊急権)とは,非常事態の際に「人権」と「権力分立」を停止して権力を一カ所に集中させてしまうものです.これはどのよう なもので,歴史的にどのような形で使われ,他国の憲法ではどうなっているのか.また,日本国憲法は,特に規定を置いていませんが,その意味をどのように理 解すればよいのか.
いずれも,憲法の教科書にもあまり詳しく書かれておらず,充分な議論がなされているとは言えないものですが,本書は読めば,すべてわかります.
著者の永井幸寿氏は,阪神淡路大震災に遭遇したことを契機に,「災害と法」の研究をライフワークとしてきた弁護士です.被災地の現場も訪れ,丹念な聴き取り調査も行っています.第一人者による決定版です.