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『海を渡る慰安婦問題』右派の<歴史戦>を問う (岩波書店16/6) を読む

 近代史を巡る評価にたいする、右派勢力の批判跳梁が激しくなっている。特に安倍反動政権の成立以来、官民共同の恫喝行動も目立っている。
 こういう時勢に対して、リアルに実態を示した一册。極めてタイムリーな刊行だと感じた。(16/8)
 
■ 編集者からのメッセージ

 

「歴史戦」という言い方をご存じでしょうか.「米中韓が連携し,『慰安婦』問題で日本を攻撃している」.そんな 危機感を抱く歴史修正主義者たちが「歴史戦」と称して,アメリカなど海外への情報発信を強めています.ネットによる情報拡散のみならず,現地での集会や訴 訟なども展開させています.しかも,深刻なのは,こうした動きが民間の運動に限られているのではないことです.政府もこうした流れに加わり,歴史修正主義 にもとづいた発信を強めています.本書では,「慰安婦」問題を中心とした,こうした右派の「歴史戦」の実態に迫ります.右派の主張や運動の流れ,海外での 現地報告などを通して,詳しく検証します.日本の右派の現状を知るためにも,貴重な本になると期待します.



■ 著者略歴

 

山口智美(やまぐち ともみ)
1967年生まれ.モンタナ州立大学准教授.専門は文化人類学フェミニズム.著書に『社会運動の戸惑い』(斉藤正美,荻上チキとの共著,勁草書房),共編に『行動する女たちの会資料集成』全8巻(高木澄子ら編,六花出版)ほか.

 

能川元一(のがわ もとかず)
1965年生まれ.大学非常勤講師.専門は哲学.著書に『憎悪の広告』(早川タダノリとの共著,合同出版),論文に「右派のイデオロギーにおけるネット右翼の位置づけ」(駒井洋監修・小林真生編著『レイシズムと外国人嫌悪』明石書店)ほか.

 

1951年イギリス生まれ.オーストラリア研究協議会特別フェロー・オーストラリア国立大学教授.専門は歴史学,日本近代史.著書に『過去は死なない』(田代泰子訳,岩波現代文庫),『批判的想像力のために』(平凡社ライブラリー)ほか.

 

小山エミ(こやま えみ)
1975年生まれ.「脱植民地化を目指す日米フェミニストネットワーク」(FeND)共同代表.



■ 目次

 

はじめに――海外展開を始めた日本の歴史修正主義者たち …… 山口智美
第1章 「歴史戦」の誕生と展開 …… 能川元一
「歴史戦」前史―転機としての「一九九七年」
情報戦―第一次安倍内閣時代の右派論壇
第二次安倍内閣と「歴史戦」
虚構の「歴史戦」
【圧倒的な物量作戦】
【被害者意識】
【字義通りの「戦争」】
本質主義的民族観】
【勝利の確信が生み出すいらだち】
第2章 アメリカ「慰安婦」碑設置への攻撃 …… 小山エミ
日系アメリカ人が「慰安婦」碑に反対しているという誤報
実態のない「日本人いじめ」
慰安婦」碑の撤去を求めた訴訟の内実と結果
慰安婦」否定派に対する反発・抵抗の広がり
サンフランシスコ市での碑の設置をめぐる日本政府の圧力
慰安婦」否定で暗躍する日本政府に対して強まる危機感
慰安婦」問題の日韓合意で割れる保守派の反応
慰安婦」否定の対外発信のゆくえ
第3章 謝罪は誰に向かって,何のために行うのか?
――「慰安婦」問題と対外発信 …… テッサ・モーリス―スズキ
マウマウ記念碑
「連累(implication)」という概念
河野談話」と安倍「七〇年談話」
ジャン・ラフ=オハーンの物語
送られてきた二冊の本
対外発信と歴史修正主義本の海外配布
政府間合意があっても歴史は変わらない
現世代・未来世代のための「謝罪」
第4章 官民一体の「歴史戦」のゆくえ …… 山口智美
男女共同参画批判と「慰安婦」否定論
一九九〇年代の歴史修正主義と「慰安婦」否定論
歴史修正主義の海外への展開とネットの活用
主戦場=アメリカ論の始まりと第二次安倍政権
自民党・日本政府と「歴史戦」
朝日バッシング
外国の研究者やジャーナリストへのバッシング
右派による英語発信の増加
「歴史戦」と国連,外務省
おわりに―浸透・拡散する歴史修正主義にどう向き合うか …… 能川元一
 年表/歴史認識問題をめぐる動き(1982-2016)
 資料1「河野談話」/資料2「戦後70年談話」