<五輪メリットは「国威発揚」 NHKが憲章と真逆の仰天解説>日刊ゲンダイ16/8/22

  天下のNHKが、こんなことをぬけぬけと放送できるのは、安倍右翼政権におべんちゃらを続けていて、とんと恥じない体質が云わせているのだろう。

恐るべし恐るべし。(16/8/26)

 

ビックリ仰天した視聴者も多かっただろう。21日のNHKの番組「おはよう日本」。オリンピックを扱ったコーナーで、「五輪開催5つのメリット」としてナント! 「国威発揚」を挙げていたからだ。

リオ五輪 成果と課題」と題し、刈谷富士雄解説委員が登場。刈谷解説委員は、まず、過去最多の41個のメダルを獲得したリオ五輪の日本勢の活躍について 「目標を達成した」と評価。そして、2020年の東京五輪に向け、競技人口の底上げやスポーツ環境を整える必要性を訴えた。驚いたのは次の場面だ。

「何のためにオリンピックを開くのか。その国、都市にとって何のメリットがあるのか」と投げ掛けると、五輪のメリットとして真っ先に「国威発揚」を示したのだ。

 

オリンピックを国威発揚の場にしたのがナチス・ドイツだ。聖火リレーの導入やサーチライトを使った光の演出など、ヒトラーは権力を世界に見せつけるため、 徹底的に政治利用した。その反省から生まれたのが、オリンピック精神の根本原則を示した「オリンピック憲章」だ。JOC(日本オリンピック委員会)ホーム ページの「オリンピズムってなんだろう」と題したコーナーで、同憲章は〈オリンピック競技大会は、個人種目または団体種目での選手間の競争であり、国家間 の競争ではない〉とある。

JOC もわざわざ、〈みんなはメダルの数を国別で数えたりして、ついついオリンピックを国同士の競争のように見てしまいがちだろう? でも、オリンピックで勝利 をおさめた栄誉は、あくまでも選手たちのものだとオリンピック憲章では定めていて、国別のメダルランキング表の作成を禁じているんだよ〉と説明。「人間の 尊厳の保持に重きを置く平和な社会を奨励する」というオリンピック憲章の精神は、戦争や独裁政治、国威発揚とは相いれない。つまり、NHKの解説はオリン ピック憲章の理念とは真逆なのだ。

 NHKを含む大メディアが「メダル41個で過去最高」と大ハシャギしているのも、本来であればオリンピック精神に反する行為なのだ。スポーツジャーナリストの谷口源太郎氏はこう言う。

「NHKがオリンピック憲章を理解していないことがハッキリした。そもそも国威発揚で国家間競争を煽るような勝利至上主義が、五輪のドーピングの問題を生 み、スポーツ競技そのものを壊している。メディアならば、それをきちんと認識する必要があります。影響力があるテレビ、それもNHKが先頭に立って国威発 揚をメリットに挙げてどうするのか。許されません」

 リオ五輪で、柔道の日本選手が「銅メダル」を獲得したにもかかわらず、「すみません」と謝罪していた姿に違和感を覚えた人は少なくなかったはず。これも 勝利至上主義が招いた悪しき慣習だ。メディアがその片棒を担いでどうするのか。