『訓読から見なおす東アジア』小島 毅 監修, 中村 春作 編 (東大出版会14/7)を読む

<東アジア海域に漕ぎだす>シリーズ5 
 <訓読>という中国語の日本語訳を取り上げ、両国の文化的交流のあり方を歴史的に論ずる。
  東アジアにおいて歴史的には、圧倒的文化的影響を近隣諸国に与えてきた中国文明の<文字言語>の履歴が語られる。少年期に<論 語>を囓り、和臭とも言われた<日本外史>にも触った経験からも、根強い中国風の文章には馴染みがあったが、改めて詳細な中国文化の有 り様を言語の面で解き明かした本著には新しく感じること頻り。ヨーロッパ各国語へのラテン語の影響に比べても、漢語を中心とする中国語の日本への影響は確 かに大きい。
 文化活動の言語について改めて感ずることだった。(16/4)

 ▼東大出版会より
 内容紹介
黄河流域で発明された漢字とそれによって綴られる漢文.二千年間にわたり東アジアにおける共通書記言語として機能し,宗教や社会制度などあらゆる局面を司った.日本以外の訓読的現象にも着目して,東アジアを漢文の受容と変容の過程から捉えなおす.
  主要目次
プロローグ 訓読から見なおす東アジア

第I部 訓読をどう論じるか
一 文化の翻訳/二 クレオール/三 雅言/四 辺境の国学/五 他地域における「訓読」 ①朝鮮半島 ② ベトナム

第II部 多様な漢文世界
一 多言語世界の中国/二 朝鮮時代の多層的漢文世界/三 長崎唐通事の言語世界/四 琉球の漢文/五 素読の教育文化/六 国学者が訓んだ『論語

第III部 訓読は日本語をつくる
一 近世日本の訓読法 ①一斎点の登場まで ②敬語をどう表現したか/二 白話小説の受容と訓読 ①白話小説はどう読まれたか ② 近代日本における翻訳/三 近代日本の成立と訓読 ①明治前期建白書の文体 ②明治・大正期の教科書 ③国語施策と「訓読」

第IV部 訓読論から展望する
一 荻生徂徠の「訓読否定論」/二 学校教科書のなかから/三 詩吟と唱詩の言語/四 近代日本の中国学と訓読 ①漢文直読論の運命 ②漢文を訓読で読む/五 中国古典と近代日本

 【執筆者】中村春作,高津 孝,齋藤希史,澤井啓一,伊藤英人,岩月純一,渡辺純成,崔在穆,木津祐子,辻本雅史,田尻祐一郎,齋藤文俊,前田 勉,川島優子,勝山 稔,木村 淳,山東 功,小島 毅,加藤 徹,陶徳民,市來津由彦