<<社説>安倍首相所信表明 基地負担軽減はまやかしだ>

<琉球新報>2016年9月27日 06:02 

 

負担を掛けている側が負担軽減を真剣に考えるならば、地元の意見を十分聞き、その実現に力を尽くすことが本来の在り方である。

 地元が負担だと拒んでいることを「負担軽減」策として問答無用で押し付けることは、一般社会では通用しない。ところが、国政ではそれがまかり通っている。
 安倍晋三首相は所信表明演説で、北部訓練場の一部4千ヘクタールの返還について「沖縄県内の米軍施設の約2割、本土復帰後、最大の返還である。0・96ヘクタールのヘリパッドを既存の訓練場内に移設することで、その実現が可能となる」と述べた。
 これが沖縄の「基地負担軽減」になるというのだ。短絡的過ぎる。
 東村高江では集落を囲むヘリパッド六つのうち、既に二つが完成した。このため、米軍の訓練で騒音が夜間も激化し、睡眠不足になった児童が学校を欠席する事態を招いた。さらに四つのヘリパッドを新設し、騒音にさらすのである。
 これが首相の言う「負担軽減」である。高江の状況を見れば移設条件付き返還の「負担軽減」は、まやかしであることは明らかだ。
 返還されるのは、米軍が「使用不可能」としている場所である。返還は「負担軽減」を目指したものではないということだ。だが、首相は面積の広さを殊更強調し、ヘリパッド新設を伴う一部返還を「負担軽減」と強弁した。国民の誤解を招くことを危惧する。
 首相は「もはや先送りは許されない。一つ一つ、確実に結果を出すことによって、沖縄の未来を切り開いていく」とも述べた。
 高江住民に「沖縄の未来」のため、米軍訓練の騒音を受け入れるべきだと言うに等しい。そもそも首相が示す「沖縄の未来」の「沖縄」に高江住民、そして県民が入っているとは思えない。
 首相は改憲については「決めるのは政府ではなく、国民」とした。在沖米軍基地についても、国民である県民の声を重く受け止めて対応すべきだ。
 首相は所信表明演説で、名護市辺野古への新基地建設には触れなかった。翁長雄志知事による辺野古の埋め立て承認取り消しを巡る不作為の違法確認訴訟で、国側が一審勝訴したことから、解決済みだと考えているならば間違いだ。
 知事をはじめ、県民は「沖縄の未来」を切り開くため、ヘリパッドや新基地建設拒否の姿勢を今後も貫く必要がある。