<損傷鉄構一度も点検せず 第一原発5・6号機>

<福島民報>(

東京電力福島第一原発構内で5・6号機の送電線を支える引留鉄構(ひきとめてっこう)の一部が損傷していた問題で、原子力規制庁は27日、東電が5号機の運転を開始した昭和53年8月以降、一度も点検しておらず、保安規定で義務付けられている保全計画も策定していなかったと発表した。福島第二原発構内にある全12カ所の引留鉄構も保全計画がなかった。東電はこれまで公表しておらず、情報公開の在り方に改めて疑問の声が出ている。

保全計画も未策定第一・第二
 5・6号機の引留鉄構は東電が今年8月に引き込みケーブルを工事した際、一部にひび割れや変形などの損傷が約50カ所見つかった。東日本大震災地震が原因となった可能性もあるとみている。
 規制庁が同月25日から開始した保安検査期間中に東電から報告を受けて事実確認をしたところ、東電が過去に点検した記録がなかった。引留鉄構は重要設備であるため原子炉等規制法の改正で平成21年から保全計画の策定が義務付けられているが、実行されていなかった。
 また、規制庁は福島第二原発の12ある引留鉄構についても保守管理状況を調べた。22年に塗装がされた実績はあったが、保全計画は策定されていなかった。規制庁は保安規定違反の疑いもあるとみて調べている。12カ所に異常は見られないという。
 東電はその後に引留鉄構の健全性評価を行い、強度不足が確認された部分については溶接などによる補強を進めており、10月中に完了させる方針。
 5・6号機では現在、送電線から外部の電気を取り込み、使用済み核燃料プールの冷却などを行っている。規制庁は「何かあれば鉄構が倒壊し、外部電源を喪失する可能性もあった」と事態を深刻視。保全計画の必要な設備は第一原発だけでも数万カ所に上るとみられ、規制庁は「他にも計画未策定の設備がないか、東電に確認させる」としている。
 チェックする立場の規制庁が保全計画の未策定を把握できていなかった理由について、規制庁は「保全計画の対象設備は膨大で、より重要な設備を優先して確認していた」と説明している。


※引留鉄構 電気を送電系統に送り込むための設備(開閉所)に送電線を引き込むための構造物。福島第一原発5・6号機は開閉所の屋上に設置され、送電線や鉄塔などを支えている。1~4号機は鉄塔に送電線を支える機能があり、開閉所に直接送電線を引き込む構造のため、引留鉄構は設置されていない。福島第二原発には2系統の送電線があり、それぞれ福島第一5・6号機と同様の引留鉄構が設置されている。