<盾突けば粛清 安倍官邸の“報復人事”に霞が関も完全降伏>

<日刊ゲンダイ>2016年9月30日

議会が安倍マンセーの場と化したスタンディングオベーションも異様だったが、この国の北朝鮮化は恐ろしい勢いで進んでいる。霞が関でも、安倍首相に少しでも盾突けば粛清という恐怖支配が横行しているのだ。

 今月、宮内庁の風岡典之長官が更迭された。天皇の生前退位をめぐり、官邸は摂政を置くといった負担軽減策の検討を進めていたのだが、そんな矢先に天皇の「お気持ち」表明の動きが表面化。生前退位の意向が国民に広く受け入れられ、負担軽減の弥縫策では済まされなくなった。

 

宮内庁幹部の異動は春が通例で、長官は70歳を迎えた年の春に退任する慣習があるため、この秋で70歳になる風岡氏も来年3月までは務めることが既定路線でした。ところが官邸サイドは、陛下のお気持ち表明を止められなかった風岡氏にカンカンで、“落とし前をつけてもらう”と詰め腹を切らせた。しかも70歳を迎えた誕生日当日に報道させるというエゲツなさ。あからさまな報復人事です」(官邸担当記者)

 

 ■財務省、外務省、農水省も……

 2014年に発足した内閣人事局霞が関の幹部人事を握って以降、安倍官邸は官僚組織のアンダーコントロールに乗り出した。“宿敵”だった財務省も、今では完全屈伏だ。ある幹部はこうボヤく。

「軽減税率と消費税率10%への引き上げで官邸と対立した佐藤慎一主税局長(当時)は、『次官の目がなくなる』と脅され、投降した。この夏の人事で次官に就任しましたが、完全に首根っこを押さえられていて、大規模経済対策などで財政出動を求められれば唯々諾々と従うしかありません」

 逆らう者には容赦せず、提灯持ちを引き立てる。これが安倍人事の基本だ。外務省では今年、初の私大出身次官が誕生。安倍首相の外遊に常に同行し、ご機嫌取りをしていたのが杉山晋輔事務次官だ。


農水省では農協解体を推進した奥原正明経営局長が次官に昇格。一方で、TPPで影響を受ける農家の側についた食料産業局長は飛ばされ、後任には経産省の産業技術環境局長が送り込まれてきました。幹部クラスで経産省との人事交流なんて聞いたことがありません。こういうことをされると、政権の批判的なことは口にできないし、官邸の意向に沿わない情報は上に上げられなくなります」(農水省関係者)

 そんな状態でマトモな判断が下せるのか。トップが裸の王様で迷惑を被るのは国民である。