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<白紙領収書/「問題ない」という非常識>神戸新聞社説2016/10/16

金額を勝手に書き込んでいいなら領収書の意味はない。永田町ではそんな社会常識も通用しないのか。

 国会議員が同僚の政治資金パーティー代金を支払った際、白紙の領収書をもらい、後から金額などを書き込んでいた問題が浮上した。国会で共産党が指摘し、菅義偉官房長官稲田朋美防衛相が認めた。

 政治資金規正法は、収支報告書に全支出の領収書を添付するよう義務付けている。政治資金の流れを透明にし、国民の目で厳しくチェックできるようにするためだ。

 指摘によると、白紙に同じ筆跡で書き込まれた領収書は、菅氏で2012年から3年間に約270枚、総額約1875万円分に上り、稲田氏は同時期で約260枚、約520万円分あった。白紙領収書が常態化していた実態がうかがえる。

 菅氏らの言い分はこうだ。大規模なパーティーで出席者全員に領収書の宛先や金額を記載すると受付が混雑し、進行の支障になる。主催者の了解の下で記載しており、金額の水増しは一切ない。だから、法律上は「問題ない」と。

 だが問題は大いにある。領収書とは支出の目的、金額、年月日を記載した書面である。お金を受け取った側が記載して発行するもので、支払った側が追記するのは適当ではない。総務省が作成した「収支報告の手引き」にそう明記されている。

 金額の書き込みが可能なら、不正の温床になりかねない。地方でも今年8月、富山市議会で白紙領収書を悪用した政務活動費の架空請求が発覚し、市議の大量辞職に発展した。

 驚いたのは、規正法を所管する高市早苗総務相が「領収書の発行者側の作成方法に規定はない」とし、書き込みも「問題ない」との見解を示したことだ。法の趣旨を徹底する立場の閣僚がこれでは、収支報告書への信頼は薄れるばかりだ。法に規定がないから問題ないとの言い訳が通るなら、法に「領収書の作成方法」を定めて取り締まるしかない。

 自民党は、党所属の国会議員に対し、パーティー代金の領収書に金額などを記載して渡すよう通達した。混雑した場合は「事後に所定事項を記載して交付する」とした。

 ここまで言われないと当たり前のことができないのは情けない。国会議員は自ら襟を正し、公明正大な収支報告に努めるべきだ。