<実態は日本の外交的敗北 日印原子力協定“ベタ降り”の中身>日刊ゲンダイ16/11/14

トランプ騒動の最中、安倍首相は来日したインドのモディ首相と11日に「日印原子力協定」に署名した。福島第1原発事故の収束もできないのに、NPT(核兵器不拡散条約)にもCTBT(包括的核実験禁止条約)にも非加盟の核保有国に、原発を売り渡すトンデモ協定だ。

 安倍首相は広島・長崎から上がる激しい抗議もどこ吹く風で、翌日には川崎重工の兵庫工場にモディ首相をアテンド。新幹線の追加受注を必死にお願いする商魂ぶりだ。

 安倍首相はインドが核実験した場合は協定を破棄すると強調してきたが、協定への明記を主張した日本に、インドは「安全保障に関わる」と猛反発。結局、「見解及び了解に関する公文」というヘンテコな関連文書に日本の言い分を並べ、〈両国の見解の正確な反映であることが了解される〉とまとめた玉虫色の書面で決着を急いだのである。

 

 ■まるで死の商人

「核爆発はダメだけれど、臨界前核実験は不問。核弾頭を運搬するミサイル技術についてもフリーハンドというメチャクチャな協定です。背景には、インドで来年中の原発建設着工を目指す米仏のプレッシャーがある。作業は『日本製鋼所』の鋼材がなければ進まないのですが、NPT非加盟のインドへの輸出は原子力協定が必須。逆算すると、ギリギリのタイミングでした。協力停止措置をめぐってもインドに押し切られた。日本のメディアは伝えませんが、インドの外務次官は〈日本と特別な協定を結ぶわけではない〉と堂々と発言しています」(岐阜女子大南アジア研究センター特任教授の福永正明氏)

 安倍首相はインフラ輸出でアベノミクスが加速するとうそぶいているが、実態は外交的敗北だ。しかも、核を持つ隣国パキスタンとの小競り合いがエスカレートしつつあるインドに原発を輸出するとは、死の商人もマッ青。これまで野党議員が、何度も質問主意書を提出して協定の中身をただしてきたが、いずれもゼロ回答だったわけである。

 

 「締結を受けて民進党議員が外務省に照会すると、〈深夜2時までに概要を案内します〉との返答だった。ところが大手マスコミには〈午後8時45分解禁〉の指定を付けて、詳細をまとめたレク資料をばらまいていた。ふざけた話です。来年の通常国会に提出して審議3時間で採決という情報も、あながち冗談とは思えません」(野党関係者)

 いつまで数に頼んだデタラメが続くのか。