<TPP12カ国、ペルーで首脳会合へ 首相「意義を世界に発信」>

◎2016年11月15日 朝刊 東京新聞

参院環太平洋連携協定(TPP)特別委員会は十四日、安倍晋三首相が出席して総括的質疑を行った。首相は、十九、二十両日にペルーの首都リマで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせ、TPP参加十二カ国の首脳会合を開くことを明らかにした。首相は「十二カ国首脳とTPPの意義をともに世界に発信したい」と述べ、各国の国内手続きの早期完了を促す考えを示した。 

 TPPを巡っては、米国のトランプ次期大統領が脱退を明言。オバマ政権の高官も任期中の議会承認の断念を表明しているが、首相は首脳会合で「米国、他の国の早期手続き完了を働き掛ける」と強調した。

 首相は、協定発効に向けた現状を「大変厳しい状況になってきた」と認めた。その上で「わが国が意思を示すことができなければ、TPPは完全に終わる」と危機感を示し、日本が早期発効を主導する考えをあらためて表明した。

 十七日に予定する米ニューヨークでのトランプ氏との会談では「自由貿易に対する私の考え方だけではなく、安全保障も含めて率直に話したい。突っ込んだ話し合いで信頼関係を構築したい」と語った。

 首相は九月の訪米時に、大統領選の対立候補だったクリントン氏と会談した。

 これに関し、事前にトランプ氏側にも伝え、その後にトランプ陣営の有力者と面会したことも明らかにした。トランプ氏からは「遊説の関係でニューヨークにおらず、会えなくて残念だ」というメッセージを伝えられたという。

<政府、駆け付け警護を付与 PKO新任務、初の閣議決定>

◎2016年11月15日 13時01分 東京新聞

政府は15日の閣議で、南スーダン国連平和維持活動(PKO)に派遣する陸上自衛隊に対し、安全保障関連法に基づく新たな任務「駆け付け警護」を付与することを決定した。3月の安保関連法施行後、可能となった新任務の付与は初。来月12日から実施する。安保法により武器使用の範囲が拡大された自衛隊の海外任務が、実際に開始されることになる。現地の治安情勢は流動的で、隊員が戦闘に巻き込まれるリスクが増大するのは不可避だ。

 安倍首相は15日の参院の特別委員会で、南スーダン情勢に関して「意義のある活動が困難であると判断する場合、撤収をちゅうちょすることはない」と述べた。

(共同)

<<社説>「土人」「シナ」発言 植民地意識が露呈した>

琉球新報2016年10月21日 06:01 

市民に侮蔑的な言葉を投げ付ける機動隊員がいる。それを軽視、擁護する政治家がいる。根深い差別意識と植民地意識、そのことに無頓着な政治土壌が露呈した。

 大阪府警の機動隊員が、北部訓練場のヘリパッド建設に抗議する市民に「土人」と発言したことへの県民の怒りが広がっている。別の隊員が「シナ人」と暴言を吐いていたことも明らかになった。
 「シナ」というのは日本の大陸侵略に結びついて使われた中国に対する蔑称だ。差別意識、植民地意識に根差す言葉を使うことは許されない。
 機動隊員の「土人」発言に対し、翁長雄志知事は「言語道断で到底許されるものではなく、強い憤りを感じている」と批判した。知事の怒りは当然である。
 菅義偉官房長官は「許すまじきこと」と述べた。ところが差別意識の表れとの指摘には「全くないと思う」と否定した。なぜそう言い切れるのか理解に苦しむ。
 暴言を受けた市民の心情、「琉球処分」以降の沖縄近現代史、米軍基地が集中する現状を踏まえれば、差別はないと断言できないはずだ。菅氏は「土人」という言葉が含む差別意識、植民地意識を深刻に受け止めるべきだ。
 松井一郎大阪府知事の行為も容認できない。短文投稿サイト「ツイッター」で「表現が不適切だとしても、大阪府警の警官が一生懸命命令に従い職務を遂行していたのがわかりました。出張ご苦労様」と投稿したのだ。
 機動隊員の発言は「不適切」で済む話ではない。それを「出張ご苦労様」とねぎらう松井氏を県民は許さない。翁長知事も「不適切な発言と認めた上でよく頑張ったとなると、県民からしたら筋が違うとは思う」と疑問視している。
 機動隊員による「土人」「シナ」発言に表れた歪(ゆが)んだ沖縄観は、警察組織にとどまるものではない。沖縄に関わる日米両政府関係者にも共通する深刻な問題だ。
 ケビン・メア元米国務省日本部長の「沖縄はごまかしとゆすりの名人」という発言や、田中聡元沖縄防衛局長の「(犯す前に)これから犯しますよと言いますか」という発言も露骨な差別意識や植民地意識の表れであり、機動隊員の発言と同根だ。
 機動隊員の発言を単なる失言と済ましてはならない。その裏にある深刻な沖縄蔑視を反省し、機動隊を沖縄から撤収させるべきだ。

< <社説>警察「土人」発言 「構造的差別」責任は政府に>

<琉球新報 2016年10月20日 06:02>

米軍北部訓練場内のヘリパッド建設で基地のフェンス越しに建設反対を訴える市民に対し、大阪府警の機動隊員が「土人」の暴言を発した。県警は事実を認め、「発言は遺憾」と表明した。

 「土人」発言は、反対運動の市民だけでなく、県民の心を深く傷つけた。警察への信頼も大きく失墜させた。機動隊員の監督責任者は県民に対し明確に謝罪し、発言した隊員を警察法や侮辱罪などの法令に基づき厳正に処罰すべきだ。
 現場の機動隊員は全国から招集されている。隊員の差別発言は、監督者の責任も問われる。隊員に対し、沖縄の基地問題や建設に反対する民情を理解させ、公正中立の立場で職務を行わせる指導、監督をおろそかにした責任は大きい。
 フェンスを挟んで向き合う市民への「土人」の暴言は、行動を抑制するのでなく挑発そのものだ。工事を邪魔する者は排除すればいいという、安倍政権、沖縄防衛局の意思を反映したものだろう。
 訓練場内のフェンスの鉄線を切断したとされる沖縄平和運動センターの山城博治議長は、防衛局職員の通報で逮捕された。反対運動を萎縮させたい防衛局の意を酌む「狙い撃ち」と批判されている。
 反対行動を抑圧する警察活動の、事実上の指揮者は防衛局、政府である。大規模な機動隊投入、不当な車両検閲、市民や新聞記者の排除、自衛隊ヘリの投入と、ヘリパッド建設のため政府はあらゆる手段を取っている。

 建設を至上命題とする政府の意を受け、あるいは指揮の下に、警察法が規定する「公平中正」を逸脱する警察活動が行われているのは明白だ。
 沖縄差別は歴史的な問題だ。琉球処分、大戦時には沖縄を本土防衛の防波堤にし、戦後は米軍占領を許し、米軍基地を集中させた。
 政府の沖縄に対する歴史に根差した「構造的差別」の延長線上に、辺野古新基地建設、ヘリパッド建設がある。
 県知事選、名護市長選、県議選ほか幾たびの国政選挙で県民は基地反対の民意を示してきた。民意を踏みにじり基地建設を強行する国家政策そのものが「構造的差別」と言わざるを得ない。
 沖縄は日本の植民地ではない。沖縄差別、今回の「土人発言」の責任は政府の差別政策にある。沖縄に対する構造的差別を改めぬ限り、不毛な対立は終わらない

 

<白紙領収書/「問題ない」という非常識>神戸新聞社説2016/10/16

金額を勝手に書き込んでいいなら領収書の意味はない。永田町ではそんな社会常識も通用しないのか。

 国会議員が同僚の政治資金パーティー代金を支払った際、白紙の領収書をもらい、後から金額などを書き込んでいた問題が浮上した。国会で共産党が指摘し、菅義偉官房長官稲田朋美防衛相が認めた。

 政治資金規正法は、収支報告書に全支出の領収書を添付するよう義務付けている。政治資金の流れを透明にし、国民の目で厳しくチェックできるようにするためだ。

 指摘によると、白紙に同じ筆跡で書き込まれた領収書は、菅氏で2012年から3年間に約270枚、総額約1875万円分に上り、稲田氏は同時期で約260枚、約520万円分あった。白紙領収書が常態化していた実態がうかがえる。

 菅氏らの言い分はこうだ。大規模なパーティーで出席者全員に領収書の宛先や金額を記載すると受付が混雑し、進行の支障になる。主催者の了解の下で記載しており、金額の水増しは一切ない。だから、法律上は「問題ない」と。

 だが問題は大いにある。領収書とは支出の目的、金額、年月日を記載した書面である。お金を受け取った側が記載して発行するもので、支払った側が追記するのは適当ではない。総務省が作成した「収支報告の手引き」にそう明記されている。

 金額の書き込みが可能なら、不正の温床になりかねない。地方でも今年8月、富山市議会で白紙領収書を悪用した政務活動費の架空請求が発覚し、市議の大量辞職に発展した。

 驚いたのは、規正法を所管する高市早苗総務相が「領収書の発行者側の作成方法に規定はない」とし、書き込みも「問題ない」との見解を示したことだ。法の趣旨を徹底する立場の閣僚がこれでは、収支報告書への信頼は薄れるばかりだ。法に規定がないから問題ないとの言い訳が通るなら、法に「領収書の作成方法」を定めて取り締まるしかない。

 自民党は、党所属の国会議員に対し、パーティー代金の領収書に金額などを記載して渡すよう通達した。混雑した場合は「事後に所定事項を記載して交付する」とした。

 ここまで言われないと当たり前のことができないのは情けない。国会議員は自ら襟を正し、公明正大な収支報告に努めるべきだ。

<新潟知事選 統一候補・米山氏が勝利>しんぶん赤旗2016年10月17日

自公破る 市民と野党の共闘実る「原発再稼働ノー」流れ大きく 「やったー。勝ったぞー」。

16日投開票の新潟県知事選で、市民と共産、自由(旧生活)、社民、新社会、緑の5党が擁立した米山隆一氏(49)が、自民・公明党推薦の森民夫氏(67)=前長岡市長=を大接戦の末に破り初当選を果たしました。東京電力柏崎刈羽原発の再稼働が大争点の選挙戦。最終盤に官邸、自民党本部、電力業界を中心とする財界の激烈な締め付けをはね返した、市民と野党による歴史的な大勝利です。

 

午後9時、当選確実の報が流れた新潟市中央区の米山事務所。詰めかけた市民や支援者から「ばんざーい、ばんざーい」と大歓声が起こるとともに、「よーねやま、よーねやま」コールに包まれました。いたるところで支援者が抱き合ったり、握手を交わすなど喜びを表しました。

 事務所に姿を現した米山氏は「県民みなさんの勝利です。オール新潟の勝利です」とあいさつし、原発再稼働ストップ、TPPから新潟の農業を守るといった、選挙中に掲げた公約実現のために、みなさんの力を借りながら全力で頑張ると決意表明しました。

 選対本部長の森裕子参院議員は「再稼働を絶対許さない県民の意思が示されたものだ」と強調すると、大きな拍手に包まれました。日本共産党の藤野保史衆院議員も事務所に駆けつけました。

 NHKの出口調査によると、柏崎刈羽原発の再稼働に対し「反対」と答えた人が73%に上り、そのうち6割台が米山候補を支持しました。

 米山氏を擁立した確認団体「新潟に新しいリーダーを誕生させる会」(市民と5野党で構成)の佐々木寛共同代表の音頭で万歳三唱し、同共同代表の磯貝潤子さんが米山氏に花束を渡しました。

 佐々木氏は「本当に奇跡が起きた。新しい新潟が始まる」とのべました。

 森陣営は、終盤に「横一線」との情勢が報じられる中、党幹部や国会議員を大量動員して「県庁に赤旗が立つ」などの卑劣な攻撃や、再稼働問題で「米山氏と違いはない」などと争点回避に躍起でしたが、市民の理解は得られませんでした。

 米山氏は、新潟県魚沼市出身。東京大学医学部卒で医師、弁護士。2005年、09年、12年の衆院選新潟5区から立候補

<新知事に米山氏 柏崎再稼働に「反対」 投票率53% 野党系は本県初>

<新潟日報16/10/17>

任期満了に伴う第20回県知事選は16日投開票され、無所属新人で医師の米山隆一氏(49)=共産、自由(旧生活)、社民推薦=が、無所属新人で前長岡市長の森民夫氏(67)=自民、公明推薦=に約6万3千票差で勝ち、初当選した。米山氏は東京電力柏崎刈羽原発の再稼働に否定的な考えを前面に打ち出しており、再稼働反対の民意が示された形。国が進める再稼働が困難になる可能性がある。

 新知事の誕生は12年ぶりで、本県初の野党系となった。共産党の推薦を受けた知事も初。森氏を推した自民党は県議会の約3分の2を占めており、原発再稼働問題をはじめ、人口減少、経済活性化といった課題が山積する中、米山氏がどう円滑に県政運営を進められるかが今後の焦点となる。

 泉田裕彦知事が4選出馬を突如取りやめ、新人4人の争いとなった今知事選。米山氏は野党3党のほか市民団体などが支援した。

 米山氏は再稼働問題を最大の争点と位置付けた。「福島事故の検証なくして再稼働の議論はできない」と、泉田知事の路線継承を強調。選挙戦中盤からは「現状では再稼働は認められない」と主張を強めた。

 自主投票の民進党の一部が終盤、米山氏の支援に回った。野党統一候補自民党候補を破った7月の参院選新潟選挙区に続き、野党が連勝する形となった。

 米山氏は16日夜、新潟市中央区の選挙事務所で「原発再稼働の話がきっとすぐ来る。約束した通り、現状では認められないとはっきり言う」と述べた。

 自民、公明両党から推された森氏は県市長会や町村会、建設業界などの推薦のほか、民進党の支持団体・連合新潟の支援を得て組織戦を展開。自民党が党本部直轄で支持団体を引き締めたが、及ばなかった。

 ともに無所属新人で行政書士の後藤浩昌氏(55)と元団体職員の三村誉一氏(70)は浸透しなかった。投票率は53・05%で、前回2012年よりも9・10ポイント上昇した。

 当日有権者数 194万4050▽投票者数 103万1408▽投票率53・05%▽無効 1万8109▽持ち帰り 11▽不受理 1